東京都でスナック、ガールズバー、クラブなどの開業を考えている方にとって、内装工事は店舗づくりの中でも重要な工程です。
しかし、風俗営業許可が関係する店舗の場合、
「おしゃれな内装にしたい」
「客席を広くしたい」
「個室風のスペースを作りたい」
といった希望だけで工事を進めてしまうと、後からレイアウトの変更が必要になる可能性があります。
風俗営業では、営業所の構造や設備について技術上の基準が定められており、営業所が基準に適合しない場合は許可を受けられないことがあります。警視庁も、営業所の構造・設備が風俗営業の種類に応じた基準に適合しない場合を許可できないケースとして案内しています。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
そこでこの記事では、東京都で風俗営業許可を取得する場合に、内装工事前に確認しておきたい客室・壁・仕切り・照明・音響設備などのポイントを行政書士がわかりやすく解説します。
風俗営業の内装は「デザインだけ」で決めない
店舗の内装を考えるとき、一般的には、
- おしゃれな雰囲気にする
- 客席を増やす
- カウンターを広くする
- 個室を作る
- 照明を暗くする
- 音楽設備を充実させる
といった点を検討すると思います。
もちろん、店舗の雰囲気づくりも重要です。
しかし、風俗営業許可を取得する店舗では、それだけでなく風営法上の構造・設備の基準に適合するかを考える必要があります。
例えば、風俗営業の1号から3号営業については、客室内部の見通しを妨げる設備を設けないことや、客室の出入口に一定の施錠設備を設けないことなどが技術上の基準として定められています。(npa.go.jp)
そのため、
デザインを決める → 工事する → 最後に許可を確認する
という順番ではなく、
営業形態を決める → 許可基準を確認する → レイアウトを決める → 工事する
という順番で進めることが大切です。
まず確認したいのが「客室」
風俗営業の内装で特に重要なのが客室です。
平面図を作成するときにも、客室の位置や面積を確認しますが、実際の内装工事でもその計画と一致している必要があります。
例えば、
- 客室の位置
- 客室の数
- 客室の床面積
- 客室とカウンターの位置関係
- 客室とバックヤードの位置関係
- 客室内の壁や仕切り
などを確認します。
警視庁は、許可取得後に客室の位置・数・床面積を変更する場合には、軽微な変更を除いて、あらかじめ公安委員会の承認を受ける必要があると案内しています。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
そのため、開業時のレイアウトについても、工事前にしっかり確認しておくことが重要です。
壁や仕切りを作るときは注意
内装工事では、
「ここに壁を作って席を分けよう」
「このスペースを個室風にしよう」
といった変更を行うことがあります。
しかし、風俗営業では、客室内部の見通しを妨げる設備について基準があるため、自由に壁や仕切りを設置できるとは限りません。(npa.go.jp)
特に、
- 高いパーテーション
- 客室を区切る壁
- 見通しを遮る装飾
- 個室のような構造
- カウンター周辺の仕切り
などを設置するときは注意が必要です。
「お客様同士が落ち着いて過ごせるように」と考えた仕切りが、風営法上の構造基準との関係で問題になる可能性もあります。
したがって、仕切りを設ける場合には、工事を始める前に確認することをおすすめします。
「個室風」にする場合は特に慎重に
飲食店の内装では、半個室や個室風の席が人気になることがあります。
しかし、風俗営業の場合は、単純に「個室を作ればよい」と考えることはできません。
客室内部の見通しに関する基準があるためです。
特に、
- 壁で完全に囲む
- 天井近くまで仕切る
- パーテーションで視線を遮る
- カーテンなどで客室を区切る
といった設計を検討している場合には、事前確認が重要です。
なお、風俗営業の3号営業には「他から見通すことが困難」で、かつ5㎡以下の客席を設けて営む営業という独自の定義があります。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
したがって、「個室風の席だから3号営業になる」といった単純な判断もできません。
営業内容と店舗構造を合わせて確認する必要があります。
出入口にも注意する
内装工事では、店舗の出入口や客室の出入口についても確認しておきましょう。
風俗営業の構造設備基準では、客室の出入口に施錠設備を設けないことが原則として定められています。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については例外があります。(npa.go.jp)
そのため、
「防犯のために鍵を付けよう」
「お客様が勝手に出入りできないようにしよう」
などと考えて、後から鍵や施錠設備を追加する場合には注意が必要です。
出入口の仕様についても、工事前に確認しておくと安心です。
照明設備は営業の種類によって確認する
バーやスナックの内装では、照明によって店の雰囲気が大きく変わります。
「少し暗めの落ち着いたお店にしたい」
という希望も多いでしょう。
ただし、風俗営業では照度についても基準があります。
例えば、風俗営業の1号・2号営業では、営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持するために必要な構造・設備を有することが基準の一つとなっています。(npa.go.jp)
一方、風俗営業の2号営業は、客席における照度を10ルクス以下として営む営業として定義されています。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
営業の種類によって基準が異なるため、
「バーだから暗くても大丈夫」
というように一律に考えるのは避けた方がよいでしょう。
カラオケ・スピーカーなど音響設備も確認
ガールズバーやスナックでは、カラオケやBGMのために、
- カラオケ機器
- スピーカー
- アンプ
- その他の音響設備
などを設置することがあります。
風俗営業の申請関係では、営業所の構造・設備として音響設備や防音設備も確認対象となります。(npa.go.jp)
また、営業所の騒音・振動についても基準が関係します。警察庁が公開している確認資料でも、実地調査において騒音・振動の数値を確認する項目が設けられています。(npa.go.jp)
そのため、音響設備を設置する場合には、
「どんなスピーカーを付けるか」だけでなく、「店舗外への音の影響」も含めて検討する
ことが大切です。
カウンターを作るときも平面図と一致させる
ガールズバーやスナックでは、カウンターが店舗の中心になることがあります。
内装工事では、
- カウンターの位置
- カウンターの長さ
- 客側のスペース
- 従業者側のスペース
- カウンターと客室の位置関係
などを確認します。
特に、許可申請時に提出する平面図と工事後の店舗が違っている状態は避ける必要があります。
例えば、
「工事の途中でカウンターを1m移動した」
「予定していた壁を撤去した」
「客席を増やした」
などの場合、変更内容によっては許可申請時の図面との整合性に問題が生じる可能性があります。
工事内容を変更するときは、事前に確認することが大切です。
内装工事業者に「風俗営業許可を取る店舗」と伝える
内装業者に工事を依頼するときには、
「この店舗は風俗営業許可を取得する予定です」
ということを最初に伝えておくことをおすすめします。
一般的な飲食店として設計した場合と、風俗営業許可を取得する店舗として設計した場合では、確認すべき事項が異なるためです。
例えば、
- 客室の配置
- 壁・仕切り
- 照明
- 音響設備
- 防音設備
- 出入口
などについて、風営法との関係を考える必要があります。
もちろん、内装業者だけで風営法上の許可判断をすることはできません。
そのため、
行政書士などに法令上の確認を依頼し、内装業者にはその内容を共有する
という進め方が分かりやすいでしょう。
「工事をしてから行政書士に相談」は避けたい
風俗営業許可について相談を受ける際、
「もう内装工事が終わったのですが、許可は取れますか?」
というケースには注意が必要です。
もちろん、完成後の店舗について確認することはできます。
しかし、もし構造・設備に問題があった場合、完成後では簡単に変更できないことがあります。
例えば、
- 壁を撤去する
- パーテーションを作り直す
- 客室の配置を変更する
- カウンターを移動する
- 照明設備を変更する
- 防音対策を追加する
などの対応が必要になる可能性があります。
そのため、
物件契約 → 内装工事 → 許可申請
と一気に進めるのではなく、
物件確認 → 図面確認 → 内装計画 → 工事 → 許可申請
という順番を意識することが重要です。
許可申請後に勝手に内装を変更しない
風俗営業許可の申請後についても注意が必要です。
申請時に提出した平面図と実際の店舗が違っていると、審査に影響する可能性があります。
そのため、申請後に、
「もう少し席を増やしたい」
「壁を変更したい」
「カウンターを移動したい」
などの変更をしたくなった場合には、まず確認することをおすすめします。
営業所の構造・設備が基準に適合しているかどうかは、風俗営業許可の重要な審査事項です。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
許可取得後の改装にもルールがある
「許可を取った後なら、店内を好きなように改装できる」
というわけでもありません。
警視庁によれば、営業所の構造・設備を変更する場合、変更内容によって、
- 事前の変更承認
- 変更後の届出
- 届出不要
のいずれかに分かれます。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
例えば、次のような変更は、軽微な変更を除いて事前の承認が必要となります。
- 大規模な修繕・模様替
- 客室の位置変更
- 客室数の変更
- 客室の床面積変更
- 壁・ふすまなど内部を仕切る設備の変更
- 営業方法の変更に伴う構造・設備の変更
一方、小規模な修繕や模様替、家具の設置・入替え、照明・音響・防音設備の変更などは、軽微な変更として届出の対象になる場合があります。照明・音響・防音設備の変更については、変更から10日以内、それ以外の軽微な変更については原則1か月以内に届出が必要とされています。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
ただし、変更内容によって扱いが異なるため、「小さい工事だから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
家具の移動なら自由にできる?
すべてのレイアウト変更に届出が必要というわけではありません。
警視庁では、営業所内の見通しを妨げない程度の軽微な椅子・テーブル等の配置変更については、届出を要しない扱いとしています。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
ただし、
「テーブルを移動しただけだから何をしてもいい」
という意味ではありません。
例えば、大きな棚やパーテーションなどを設置して、営業所内の見通しに影響を与える場合には別の扱いになる可能性があります。
変更する設備の種類や大きさ、位置などによって判断が変わるため、迷った場合には事前に確認しましょう。
内装工事前に確認したいチェックリスト
最後に、風俗営業許可を予定している店舗で内装工事を始める前に、確認しておきたいポイントをまとめます。
店舗レイアウト
- □ 客室の位置を確認した
- □ 客室の数を確認した
- □ 客室の床面積を確認した
- □ カウンターの位置を確認した
- □ 出入口の位置を確認した
- □ バックヤードとの位置関係を確認した
壁・仕切り
- □ 壁の位置を確認した
- □ パーテーションの高さを確認した
- □ 客室内の見通しを妨げないか確認した
- □ 個室風のスペースを作る場合は事前確認した
設備
- □ 照明設備を確認した
- □ 音響設備を確認した
- □ 防音設備を確認した
- □ カラオケ設備を確認した
- □ その他の設備を確認した
書類との整合性
- □ 平面図と工事内容が一致している
- □ 内装工事業者に風俗営業許可を取得する予定であることを伝えた
- □ 工事内容を変更する場合の確認先を決めている
内装工事の前に行政書士へ相談するメリット
風俗営業許可では、単に申請書類を作成するだけではなく、物件・営業内容・店舗構造・設備をまとめて確認することが重要です。
特に内装工事は、一度完成してしまうと変更に費用がかかります。
そのため、
「この壁は作って大丈夫?」
「この高さのパーテーションは問題ない?」
「カウンターはこの位置で大丈夫?」
「照明をもっと暗くしたいけれど問題ない?」
「個室風の席を作りたいけれど大丈夫?」
といった疑問がある段階で相談しておくと、後からの手戻りを防ぎやすくなります。
行政書士に依頼する場合も、許可申請だけではなく、物件契約や内装工事の前段階から相談できるかを確認してみるとよいでしょう。
まとめ|風俗営業の内装は「工事前」の確認が重要
東京都で風俗営業許可を取得する場合、内装工事は単なる店舗デザインの問題ではありません。
営業所の構造・設備が風営法上の基準に適合している必要があるため、工事前の確認が重要です。
特に、
- 客室の位置・数・面積
- 壁・仕切り
- 客室内部の見通し
- 出入口
- 照明設備
- 音響設備
- 防音設備
- カウンターの位置
などについて、営業形態と合わせて確認する必要があります。
また、許可取得後についても、客室の位置・数・床面積や壁・仕切りなどを変更する場合には、事前の変更承認が必要となることがあります。軽微な変更についても届出が必要となる場合があります。(keishicho.metro.tokyo.lg.jp)
そのため、
「物件を決める」
↓
「平面図を確認する」
↓
「風営法上の構造・設備を確認する」
↓
「内装工事を行う」
↓
「許可申請を行う」
という流れで準備することが大切です。
特に、内装工事が始まってから「このレイアウトでは許可が難しい」と判明すると、追加工事や設計変更が必要になる可能性があります。
ガールズバー、スナック、クラブなどの開業を検討している方は、内装工事を始める前に、風俗営業許可との関係を確認しておくことをおすすめします。
※この記事は、東京都における風俗営業許可に関する一般的な情報を解説したものです。実際の許可要件や変更手続きは、営業の種類、店舗の構造、設備、営業方法などによって異なる場合があります。具体的な案件については、管轄警察署等への確認が必要です。
