「この物件でバーやスナックを開業したい」
そう思って物件を探している方は、家賃や駅からの距離、内装だけでなく、風俗営業許可を取得できる場所なのかという点も確認しておく必要があります。
東京都では、風俗営業について営業所を設置できる地域に一定の制限があります。
そのため、
「物件を契約してから許可のことを考えればいい」
という進め方はおすすめできません。
今回は、東京都で風俗営業を始める場合に、物件契約前に確認しておきたい営業場所のルールについて、行政書士がわかりやすく解説します。
風俗営業は「どこでも営業できる」わけではありません
風俗営業の許可申請では、申請者本人だけでなく、営業所そのものについても審査があります。
警視庁も、営業所について、
- 構造・設備が技術上の基準に適合しているか
- 東京都の条例で定める地域に該当していないか
- 管理者を選任できるか
などを確認することとしています。
つまり、飲食店として使用できる物件だからといって、風俗営業の許可も取得できるとは限りません。
ここが、一般的な飲食店の物件探しと風俗営業の物件探しで大きく違うところです。
東京都では「用途地域」が重要
風俗営業の営業所を設置できるかを考えるうえで、まず確認したいのが用途地域です。
東京都の条例では、風俗営業の営業所の設置を特に制限する地域として、
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
などが定められています。
そのため、物件を見つけたら、
「飲食店として使えるか」だけでなく、「予定している風俗営業の種類をその場所で行えるか」
という視点で確認することが大切です。
「商業地域なら大丈夫」とも限りません
ここは特に注意したいポイントです。
「商業地域だから風俗営業の許可を取れる」
と単純に考えることもできません。
東京都では、学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所などの周囲100メートル以内についても、営業所の設置が制限される規定があります。
ただし、近隣商業地域や商業地域については、東京都公安委員会規則による一定の例外があります。
したがって、
「学校から100m以内だから絶対に許可が取れない」
という理解も正確ではありません。
用途地域と、周辺の保護対象施設、さらに東京都の条例・規則上の例外まで確認する必要があります。
「100mルール」は特に誤解されやすい
風俗営業の相談を受ける際に、
「近くに学校があるのですが、100m以内ならダメですよね?」
と質問されることがあります。
確かに東京都の条例では、学校などの敷地の周囲100メートル以内の地域について、風俗営業の営業所の設置を特に制限しています。
しかし、先ほど説明したとおり、地域によっては例外があります。
たとえば東京都公安委員会規則では、近隣商業地域・商業地域について、施設の種類によって50m、20m、10mなど異なる距離の基準が定められています。さらに、一定の区域については別の取扱いがあります。
そのため、
「100m」という数字だけを見て判断するのは危険です。
物件ごとに、実際の所在地と周辺環境を確認することが重要です。
物件を契約する前に確認したい4つのポイント
では、実際に物件を探すときには、何を確認すればよいのでしょうか。
ここでは、風俗営業を予定している方が特に確認しておきたいポイントを4つに整理します。
① まず「どんな営業をするのか」を決める
一口に「バー」や「スナック」といっても、実際の営業方法によって必要となる手続きが変わる可能性があります。
たとえば、接待を伴う飲食店なのか、深夜に酒類を提供する飲食店なのかなどによって、風営法上の扱いが異なります。
警視庁では、接待をして飲食させる1号営業、低照度飲食店である2号営業、区画席飲食店である3号営業など、営業形態ごとに区分しています。
そのため、物件探しの段階で、
「店名はバーだけど、実際にはどのようなサービスをするのか」
を整理しておくことが大切です。
② 物件の用途地域を確認する
次に、その物件がどの用途地域にあるのかを確認します。
同じように見える繁華街の物件でも、所在地によって用途地域が異なることがあります。
風俗営業の場合は、用途地域が営業場所の判断に関係するため、物件資料だけで判断せず、必要な情報を確認するようにしましょう。
③ 周辺に学校などがないか確認する
用途地域だけではなく、周辺環境も確認します。
東京都の条例では、学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所などが営業場所の判断に関係します。
そのため、物件を見るときは、
- 近くに学校がないか
- 病院や診療所がないか
- 図書館がないか
- 児童福祉施設がないか
などを確認することが重要です。
特に注意したいのは、地図だけを見て判断しないことです。
施設の種類や所在地、用途地域などによって取扱いが変わるため、最終的には条例・規則に照らして確認する必要があります。
④ 物件契約前に許可の可能性を確認する
そして、最も重要なのがこれです。
できれば物件の賃貸借契約を締結する前に、風俗営業許可の可能性を確認しておきましょう。
風俗営業の許可が必要な営業をする予定なのに、
- 物件を見つける
- 賃貸借契約をする
- 内装工事をする
- その後に許可について調べる
という順番で進めてしまうと、営業場所の問題が発覚した場合に大きな負担となる可能性があります。
もちろん、契約前に確認したからといって許可が必ず取得できることを保証できるわけではありません。
しかし、少なくとも契約前に営業場所として問題がないかを確認することは、非常に重要です。
「飲食店の営業許可が取れる物件」と「風俗営業ができる物件」は別
ここも覚えておきたいところです。
飲食店を営業するための保健所関係の手続きと、風俗営業許可は別の制度です。
そのため、
「前のテナントが飲食店だったから大丈夫」
とは限りません。
また、
「飲食店営業ができる物件だから、スナックの風俗営業許可も取れる」
とも限りません。
風俗営業を予定しているのであれば、風営法上の営業場所の基準を別途確認する必要があります。
内装工事についても、物件契約前から考えておきたい
営業場所の問題をクリアしたとしても、次に確認したいのが営業所の構造・設備です。
風俗営業では、営業の種類に応じて構造・設備についての基準があります。
また、許可取得後に客室の位置・数・床面積を変更したり、壁や仕切りなどを変更したりする場合には、変更内容によって事前の承認が必要となることがあります。
そのため、
「とりあえず契約して、好きなように内装を作ればいい」
という考え方もおすすめできません。
物件の段階から、
- 客室をどのように配置するのか
- カウンターをどこに設けるのか
- 客室とその他の部分をどう区切るのか
- 照明などをどうするのか
といったことを考えておく必要があります。
東京で風俗営業を始めるなら「物件→許可」ではなく「許可→物件」を意識する
もちろん実際には、物件探しと許可の検討を同時に進めるケースもあります。
ただ、考え方としては、
「気に入った物件を契約してから許可を調べる」
よりも、
「やりたい営業内容を決め、その営業が可能な物件を探す」
という順番のほうが安全です。
特に東京都では、用途地域だけでなく、周辺の学校・病院などの施設や条例・規則上の例外も関係します。
物件によって判断が変わるため、住所が決まった段階で個別に確認することが重要です。
まとめ|風俗営業の物件は「契約前」の確認が大切
東京都で風俗営業を始める場合、物件選びは非常に重要です。
今回のポイントをまとめると、
- 風俗営業は営業できる場所に制限がある
- 用途地域を確認する必要がある
- 学校・病院・図書館など周辺施設も確認する
- 「100m以内なら絶対NG」と単純には判断できない
- 東京都の条例・公安委員会規則による例外もある
- 飲食店として使える物件でも、風俗営業ができるとは限らない
- 内装工事についても営業許可を意識して計画する
- できれば物件契約前に風営法上の営業可能性を確認する
という点が重要です。
特に東京でバーやスナックの開業を考えている方は、物件を契約してから「許可が取れない」と気付くことがないよう、早い段階で確認しておくことをおすすめします。
東京都で風俗営業許可を検討している方へ
当事務所では、東京都でバー・スナックなどの開業を検討されている方から、風俗営業許可に関するご相談をお受けしています。
「この物件で営業できるのか?」
「接待をする予定だけど、風俗営業許可が必要なのか?」
「物件を契約する前に確認しておきたい」
といった段階からのご相談にも対応しています。
風俗営業許可は、営業形態・物件・用途地域・周辺環境・店舗の構造などをまとめて検討することが大切です。
物件を契約してからではなく、ぜひ早めにご相談ください。

