東京都でスナックやバーを開業するとき、特に注意したいのが「接待」に該当する営業を行うかどうかです。
「女性スタッフがお酒を作るだけなら大丈夫?」
「カウンター越しにお客さんと話すのは?」
「一緒にカラオケを歌ったら接待になる?」
「お客さんの隣に座るとどうなる?」
このように、実際の店舗では判断に迷う場面が少なくありません。
風営法では「接待」を、**「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」**と定義しています。
さらに、警察庁は2026年7月1日付で「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」を新たに定めており、現在の実務ではこの基準も重要な判断材料になります。
この記事では、東京都でスナック・バーの開業を考えている方に向けて、「接待」に該当しやすい行為と、接待に当たらないとされている行為を具体的に整理します。
そもそも「接待」とは?
風営法上の「接待」は、単にお客様と会話することを意味するものではありません。
警察庁の現行の解釈運用基準では、接待について、営業者や従業者側が特定の客または客のグループに対して、通常の飲食に伴うサービスを超える程度の会話やサービスを行うこととして整理されています。
つまり、接待の判断では、
- 誰に対して行っているのか
- どのような行為をしているのか
- その行為が継続しているのか
- 通常の飲食サービスを超えているのか
といった点が重要になります。
「少し話しただけだから大丈夫」と一律に判断するのではなく、実際の営業方法全体を見ることが大切です。
「隣に座って話す」は接待になりやすい
スナックで特に注意したいのが、お客様の近くに座って継続的に話し相手になるケースです。
警察庁の解釈運用基準では、特定少数の客の近くにいて、継続して談笑の相手となったり、酒などの飲食物を提供したりする行為は接待に当たるとされています。
例えば、
接待に当たると考えられる例
- お客様の隣に座って長時間会話する
- 特定のお客様の席について継続的に接客する
- 特定のお客様の話し相手として長時間過ごす
- お客様の隣でお酒を作りながら継続的に会話する
このような営業を行う場合は、風俗営業に該当する可能性を検討する必要があります。
カウンター越しの会話はどうなる?
では、スタッフがカウンターの内側にいて、お客様と会話する場合はどうでしょうか。
ここはスナックやバーの開業者から非常に質問の多いところです。
警察庁の基準では、カウンター内で単に客の注文に応じて酒類などを提供する行為や、それに伴う社交儀礼上の挨拶、若干の世間話程度は、接待に当たらないとされています。
したがって、
「いらっしゃいませ」
「今日はお仕事帰りですか?」
「いつもありがとうございます」
といった通常の接客会話まで、直ちに接待になるというわけではありません。
ただし、カウンター越しであっても、特定のお客様に対して継続的に談笑の相手になるなど、通常の飲食に伴うサービスを超える行為を行えば、接待に該当する可能性があります。
そのため、
「カウンター越しなら絶対に接待ではない」
と考えるのは適切ではありません。
お酌や水割りを作るだけなら?
お客様にお酒を提供すること自体が、直ちに接待になるわけではありません。
警察庁の基準では、お酌をしたり水割りを作ったりしても、速やかにその場を立ち去る行為は接待に当たらないとされています。
例えば、
接待に当たらないとされている例
- 注文されたお酒を作る
- お客様のグラスにお酒を注ぐ
- 水割りを作って提供する
- 提供後、その場を離れる
といった通常の飲食サービスです。
一方で、お酒を作ることをきっかけに特定のお客様の隣にとどまり、継続して会話をするなどの場合は、別途「接待」に該当するかを検討する必要があります。
カラオケは「誰に対して行うか」がポイント
スナックで特に注意したいのがカラオケです。
カラオケがあるだけで風俗営業になるわけではありません。
問題になるのは、スタッフがどのようにカラオケに関わるかです。
警察庁の基準では、特定少数の客の近くにいて、
- 歌うことを勧める
- 客の歌に手拍子をする
- 客の歌に拍手をする
- 客の歌を褒めはやす
- 客と一緒に歌う
といった行為は、接待に当たるとされています。
例えば「デュエット」は要注意
スタッフがお客様と一緒に歌う行為は、警察庁の基準でも接待に当たる行為として明示されています。
そのため、
「カラオケを置くだけなら大丈夫だから、スタッフとお客様が一緒に歌っても大丈夫」
と単純に考えることはできません。
一方、不特定のお客様に対して歌うことを勧めたり、不特定のお客様の歌に拍手をしたりする行為などは、基準上、接待には当たらないとされています。
スタッフがショーをする場合
スタッフによる歌やダンスなどのショーを予定している場合も注意が必要です。
特定少数のお客様に対して、そのお客様専用の客室や区画された場所でショーなどを見せたり聴かせたりする行為は、接待に当たるとされています。
一方で、ホテルのディナーショーのように、不特定多数のお客様に同時にショーを見せる形は、接待には当たらないとされています。
つまり、
「ショーをするかどうか」
だけではなく、
「誰に向けて、どのような形で行うのか」
が重要になります。
お客様と一緒にゲームをする場合
最近では、バーやスナックなどにカードゲームやボードゲーム、ダーツなどを設置する店舗もあります。
ここでも注意したいのが、スタッフがゲームに参加するケースです。
警察庁の基準では、特定少数のお客様と一緒に遊戯、ゲーム、競技などを行う行為は接待に当たるとされています。
一方、
- お客様が一人でゲームをする
- お客様同士でゲームをする
といった行為については、それだけで直ちに接待に当たるとはされていません。
したがって、ゲームを置くこと自体だけで判断するのではなく、スタッフがゲームに参加する営業なのかを確認する必要があります。
ダンスを一緒にする場合
ダンスについても、接待に該当するケースがあります。
警察庁の基準では、
- 特定のお客様の相手となって身体に接触しながら踊る
- 身体に接触しなくても、特定少数のお客様の近くで継続して一緒に踊る
といった行為は接待に当たるとされています。
一方、十分な能力を持つ者が、ダンスの技能や知識を身につけさせることを目的として教える行為は、接待には当たらないとされています。
身体に触れる行為にも注意
お客様との身体的な接触についても、風営法上の「接待」となる場合があります。
警察庁の基準では、
- 身体を密着させる
- 手を握る
などの行為は接待に当たるとされています。
ただし、社交儀礼上の握手や、酔ったお客様を介抱するために必要な限度での接触などは、接待には当たらないとされています。
また、お客様の口元まで飲食物を差し出して飲食させる行為も、接待に当たるとされています。
一方、単に飲食物を運ぶ、食器を片付ける、お客様の荷物やコートを預かるといった行為は、接待には当たらないとされています。
「女性スタッフがいる=接待」ではない
スナック開業で誤解されやすいのが、
「女性スタッフを雇うと風俗営業になる」
という考え方です。
これは正確ではありません。
風営法上重要なのは、スタッフの性別や「スタッフ」「ママ」「キャスト」などの呼び方ではなく、実際にどのような営業行為を行っているかです。
警察庁の解釈運用基準でも、接待を行う人について、その名称は問わないとされています。また、接待は異性によるものに限られません。
したがって、
「ママだから大丈夫」
「アルバイトだから接待ではない」
「男性スタッフなら関係ない」
というような判断はできません。
「接待かどうか」は店名ではなく営業実態で判断する
「スナック」「バー」「ラウンジ」「ガールズバー」など、店舗の名称だけで風俗営業に該当するかが決まるわけではありません。
東京都の警視庁の業種一覧では、1号営業について、設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業とされています。
そのため、開業時には店名よりも、
- スタッフはどこに座るのか
- お客様の席につくのか
- どの程度会話をするのか
- お酒をどのように提供するのか
- カラオケにどのように参加するのか
- ゲームにスタッフが参加するのか
- お客様との身体接触があるのか
など、実際の営業方法を整理することが重要です。
接待に該当するか迷いやすいケースを整理
ここまでの内容を簡単に表にすると、次のようになります。
| 行為 | 接待の判断 |
|---|---|
| カウンター内で注文された酒を提供する | 直ちに接待とはならない |
| お酌をして速やかにその場を離れる | 接待には当たらないとされる |
| 社交儀礼上の挨拶・若干の世間話 | 接待には当たらないとされる |
| 特定客の隣で継続して談笑する | 接待に当たる |
| 特定客と一緒に歌う | 接待に当たる |
| 特定客の近くで継続して一緒に踊る | 接待に当たる |
| 特定客と一緒にゲームをする | 接待に当たる |
| 客同士でゲームをする | 直ちに接待とはいえない |
| 不特定多数にショーを見せる | 接待には当たらないとされる |
| 客と身体を密着させる | 接待に当たる |
| 社交儀礼上の握手 | 接待には当たらない |
| 酔客の介抱に必要な限度の接触 | 接待には当たらない |
ただし、表だけで個別の営業を判断できるわけではありません。
実際の店舗では複数の行為が組み合わさるため、営業全体としてどのような接客を行っているのかを確認する必要があります。
接待をするなら風俗営業許可の検討が必要
ここまで見てきたような「接待」を伴う営業を行う場合、1号営業に該当するかどうかを検討する必要があります。
東京都の警視庁では、1号営業を「料理店、社交飲食店」として案内し、客の接待をして客に遊興または飲食させる営業を対象としています。
そのため、
「接待をする予定だけれど、深夜酒類提供飲食店営業の届出だけで営業できる」
と考えるのは危険です。
深夜に酒類を提供する場合でも、まず接待を伴う営業なのかどうかを確認する必要があります。
開業前に「接客マニュアル」まで考えておく
スナックを開業する場合、許可申請だけでなく、実際の営業方法を事前に決めておくことが重要です。
例えば、
接客について
□ スタッフは客席に座るのか
□ お客様の隣に座るのか
□ お客様との会話はどのように行うのか
□ 特定のお客様に継続して接客するのか
カラオケについて
□ スタッフとお客様が一緒に歌うのか
□ スタッフが特定のお客様の歌に手拍子をするのか
□ 不特定のお客様に対する演出なのか
ゲームについて
□ ゲームを設置するのか
□ スタッフがゲームに参加するのか
□ お客様同士で遊ぶ形式なのか
その他
□ お客様との身体接触があるのか
□ お酒の提供方法はどうするのか
□ 深夜営業を行うのか
このような項目を事前に整理しておくと、必要な許可・届出を判断しやすくなります。
まとめ
東京都でスナックやバーを開業する場合、「接待」に該当するかどうかは非常に重要なポイントです。
特に覚えておきたいのは、
- カウンター内で通常の注文対応をするだけなら、直ちに接待とはならない
- お酌や水割りをして速やかにその場を離れる行為は接待に当たらないとされている
- 特定のお客様の近くで継続して談笑する行為は接待に当たる
- お客様と一緒に歌う行為は接待に当たる
- 特定のお客様と一緒にゲームをする行為は接待に当たる
- 特定のお客様の近くで継続して一緒に踊る行為は接待に当たる
- 身体を密着させるなどの行為も接待に当たる
- 店名やスタッフの呼び方ではなく、実際の営業方法が重要
という点です。
特にスナックでは、「少し会話するだけ」「カラオケを一緒に歌うだけ」と考えていた営業方法が、実際には風俗営業許可との関係で問題になる可能性があります。
そのため、開業前には店舗のレイアウトだけでなく、スタッフが実際にどのような接客をするのかまで具体的に決めておくことが大切です。
なお、接待に該当するかどうかは具体的な営業実態によって判断されるため、この記事だけで個別の営業方法について最終判断するものではありません。
東京都でスナック・バーを開業する場合は、営業内容を整理したうえで、必要に応じて所轄警察署や風営法を扱う行政書士へ事前に相談することをおすすめします。
参考にした公的資料
- 警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(令和8年7月1日)」
- 警視庁「風俗営業等業種一覧」
警察庁の現行基準では、接待について「談笑・お酌等」「ショー等」「歌唱等」「ダンス」「遊戯等」「その他」の6つの類型に分けて具体的な判断基準が示されています。
