風俗営業許可を取得する際には、店舗ごとに「管理者」を選任する必要があります。
しかし、開業予定者からは、
「管理者って店長のこと?」
「オーナーが管理者になってもいい?」
「管理者は名前だけ置いておけばいい?」
「管理者にはどんな仕事があるの?」
といった疑問が出てくることがあります。
風俗営業の管理者は、単なる店舗の役職名ではありません。
風営法では、営業所ごとに管理者を選任することが定められており、管理者には、従業者への指導、営業所の構造・設備の点検、従業者名簿の管理、苦情処理など、営業を適正に行うための役割があります。
この記事では、東京都でスナック、クラブなどの風俗営業許可を検討している方に向けて、風俗営業における管理者の役割と、店長との違い、選任時の注意点について行政書士がわかりやすく解説します。
風俗営業では営業所ごとに「管理者」が必要
風俗営業を営む場合、営業所ごとに管理者を1人選任しなければなりません。
風営法第24条では、風俗営業者は、営業所における業務の実施を統括管理する者のうちから、管理者を選任することとされています。
つまり、風俗営業許可を取得する場合には、
「誰をこの営業所の管理者にするのか」
という点も、あらかじめ決めておく必要があります。
実際に東京都の風俗営業許可申請では、選任する管理者について、誓約書、住民票、身分証明書、写真などの書類が必要とされています。
そのため、管理者は「許可申請書に名前だけ書く人」というものではありません。
管理者と店長は同じ?
結論からいうと、管理者と店長が同じ人になることはありますが、法律上まったく同じ意味ではありません。
警察庁の解釈運用基準では、風営法上の「営業所における業務の実施を統括管理する者」には、店長や支配人などが該当するとされています。
そのため、例えば、
オーナーが経営を行い、店長が店舗全体を管理している
という店舗であれば、その店長を風営法上の管理者として選任するケースが考えられます。
一方で、
店長という肩書きはあるが、実際には店舗全体を管理する立場ではない
という場合には、単純に「店長だから管理者」という考え方はできません。
重要なのは肩書きではなく、その人が営業所における業務の実施を統括管理する立場にあるかどうかです。
オーナー自身が管理者になることもできる?
オーナー自身が管理者になることもあります。
警察庁の解釈運用基準では、営業者自身が営業所内の業務を直接統括管理する場合には、営業者が自らを管理者として選任することができるとされています。
例えば、小規模なスナックを経営するオーナーが、
- 自分で店舗を管理している
- 従業者を指導している
- 営業所の設備などを管理している
- 苦情などにも対応している
という場合には、オーナー自身が管理者になることが考えられます。
一方、オーナーが店舗にほとんど関与せず、実際の店舗運営を店長に任せている場合には、管理者について別途検討する必要があります。
管理者は「名前だけ」ではいけない
管理者を選任する際に注意したいのが、実際には店舗を管理していない人を形式的に管理者として置くことです。
風営法上、管理者は営業所の業務を適正に実施するために必要な助言や指導を行う立場です。さらに、管理者には施行規則で具体的な業務が定められています。
そのため、
「昔から働いている従業員だから」
「名前を貸してくれる人がいるから」
といった理由だけで管理者を決めるのは適切ではありません。
実際に営業所を統括管理できる人を選ぶことが重要です。
風俗営業の管理者にはどんな仕事がある?
では、管理者には具体的にどのような仕事があるのでしょうか。
風営法施行規則第38条では、管理者の業務として複数の事項が定められています。
ここでは、スナックやクラブなどを経営する場合に特に関係しやすいものを紹介します。
① 従業者への指導・教育
管理者には、従業者に対する指導に関する計画を作成し、その計画に基づいて実地に指導し、記録を作成することが求められています。
例えば、
- 風営法上の禁止事項
- 未成年者に関するルール
- 従業者が守るべき事項
- 店舗での適正な営業方法
などについて、従業者に必要な指導を行うことが考えられます。
管理者自身がすべての業務を行うというより、店舗全体が法令を守って営業できるように管理する役割と考えると分かりやすいでしょう。
② 店舗の構造・設備を確認する
前回の記事でも紹介したように、風俗営業では店舗の構造・設備が重要です。
管理者には、営業所の構造・設備が技術上の基準に適合するよう、必要な点検の実施や記録の管理を行う業務があります。
例えば、
- 客室の構造
- 間仕切り
- 照明設備
- 音響設備
- その他の設備
などについて、適切な状態が維持されているかを確認することが重要になります。
そのため、許可を取った後に店舗を改装する場合にも、管理者が「この変更は大丈夫なのか」と確認することが大切です。
③ 従業者名簿を管理する
風俗営業では、従業者名簿に関する義務があります。
施行規則では、管理者の業務として、従業者名簿およびその記載について管理することが定められています。
従業員を採用した場合には、単に給与を支払って働いてもらうだけではなく、風営法上必要となる従業者関係の管理についても注意が必要です。
特に接待を伴う営業では、従業者に関する確認・記録について別途ルールがあります。
④ 接客従業者に関する確認記録を管理する
接待飲食等営業では、接客従業者について、生年月日や国籍等の確認に関するルールがあります。
管理者には、その確認に係る記録を管理することも求められています。
これは、前回までの記事で解説した「従業者」の管理ともつながる部分です。
特にスナックやクラブなど、接待を伴う営業を行う場合には、従業者を採用するときから適切な確認・記録を行う体制を整えておくことが重要です。
⑤ 店舗への苦情に対応する
管理者の業務には、営業所における業務の実施に関する苦情の処理も含まれます。
例えば、
- 店舗周辺からの苦情
- 店舗での営業に関する苦情
- 従業者の対応に関する苦情
など、営業に関連して寄せられる苦情について適切に対応することが求められます。
店舗を長く営業していくうえでは、許可を取得することだけでなく、許可後に適正な営業を続けることも重要です。
⑥ 未成年者への対応
管理者には、営業所内で、法令や条例上、客として立ち入らせてはならない未成年者を発見した場合に、退去を勧告するなど必要な措置を講ずることも求められています。
店舗の営業形態によって適用されるルールには違いがありますが、年齢確認などを含め、従業者が適切に対応できるよう管理することが重要です。
管理者になれない人もいる
誰でも管理者になれるわけではありません。
風営法では、管理者になることができない者について定められています。
例えば、未成年者は管理者になることができません。
また、一定の欠格事由に該当する人や、管理者の業務を適正に実施することができないとされる一定の場合には、管理者になることができません。
そのため、管理者を決める場合には、単純に「店長だから大丈夫」と考えるのではなく、管理者としての要件を確認する必要があります。
管理者には「専任」の考え方がある
風営法施行規則では、管理者は営業所ごとに専任の管理者として置くことが原則とされています。
つまり、1人の管理者が自由に複数店舗を掛け持ちできるというわけではありません。
ただし、一定の条件を満たす複数の営業所について、公安委員会の承認を受けることで、一人の管理者を置くことができる場合があります。
複数店舗を経営している場合には、「同じ店長を両方の管理者にすればいい」と自己判断せず、個別に確認したほうがよいでしょう。
管理者が辞めたらどうなる?
管理者が退職した場合など、管理者が欠けるケースにも注意が必要です。
風営法では、管理者が欠けた場合、その日から14日間は管理者を選任しなくてもよいとされています。
ただし、これは「14日間なら管理者がいなくても問題ない」という意味で、長期間管理者を置かなくてよいということではありません。
管理者が退職することになった場合には、できるだけ早く後任者を選任することが重要です。
管理者には講習もある
管理者には、管理者講習があります。
現在の風営法施行規則では、管理者講習には、
- 定期講習
- 処分時講習
- 臨時講習
があります。
定期講習については、原則として、管理者として選任された後、おおむね3年ごとに1回実施される仕組みとなっています。
警視庁のオンライン手続にも「管理者講習の申込み」が掲載されています。
したがって、管理者を選任したらそれで終わりではなく、管理者として継続的に適正な営業を管理していくことが重要です。
「店長だから管理者」ではなく「実際に管理できる人」を選ぶ
ここまでを踏まえると、管理者を選ぶときに重要なのは肩書きだけではありません。
例えば、次のような店舗を考えてみます。
ケース1:オーナーが店舗を直接管理
オーナー自身が、
- 毎日店舗にいる
- 従業者を指導する
- 店舗設備を確認する
- 苦情にも対応する
という場合。
このようなケースでは、オーナー自身が管理者となることが考えられます。
ケース2:店長が店舗を実質的に管理
オーナーは経営上の判断を行うものの、日常的な店舗運営は店長が行っている場合。
この場合には、店長を管理者として選任することが考えられます。
ケース3:店長という肩書きだけ
店長という肩書きはあるものの、
- 店舗の判断権限がほとんどない
- 従業者を管理していない
- 店舗の運営にほとんど関与していない
という場合には、単純に「店長だから管理者」とすることには注意が必要です。
実際に営業所を統括管理できる人なのかを確認することが重要です。
風俗営業許可の申請時には管理者の書類も準備する
風俗営業許可の申請では、管理者に関する書類も必要になります。
警視庁では、選任する管理者について、
- 誠実に業務を行うことを誓約する書面
- 住民票
- 市区町村が発行する身分証明書
- 管理者の欠格事由に該当しないことを誓約する書面
- 写真2枚
などを必要書類として案内しています。
したがって、申請直前になって「管理者を誰にするか決めていない」という状態になると、書類の準備にも影響します。
物件や内装だけでなく、管理者についても早い段階で決めておくことをおすすめします。
風俗営業の管理者チェックリスト
最後に、管理者を選任するときの確認ポイントをまとめます。
【管理者の選任】
□ 営業所ごとに管理者を選任している
□ 実際に営業所を統括管理できる人を選んでいる
□ 店長という肩書きだけで判断していない
□ 管理者の欠格事由を確認している
□ 必要な書類を準備している
【営業開始後】
□ 従業者への指導体制を整えている
□ 指導に関する記録を適切に管理している
□ 店舗の構造・設備を確認している
□ 従業者名簿を適切に管理している
□ 接待飲食等営業の場合、接客従業者に関する確認記録を管理している
□ 店舗に関する苦情に対応できる体制を整えている
□ 店舗の改装前に構造・設備への影響を確認している
まとめ|管理者は「名前を置く人」ではなく、店舗の適正営業を支える立場
風俗営業許可を取得する場合、営業所ごとに管理者を選任する必要があります。
管理者は単なる形式上の役職ではなく、
- 従業者への指導
- 構造・設備の点検管理
- 従業者名簿の管理
- 接客従業者に関する確認記録の管理
- 苦情への対応
- 未成年者への必要な対応
など、営業所の適正な運営を確保するための役割を担っています。
また、管理者と店長は必ずしも同じものではありません。
実際には店長が管理者を兼ねるケースもありますが、重要なのは肩書きではなく、その人が営業所の業務を統括管理できる立場にあるかどうかです。
これから東京都でスナック、クラブなどの開業を考えている場合には、物件や内装だけでなく、
「誰を管理者にするのか」
という点も早めに検討しておくとよいでしょう。
風俗営業許可は、許可を取得することだけがゴールではありません。
許可取得後も、管理者を中心として、店舗の構造・設備、従業者、営業方法などを適切に管理し、法令を守って営業を継続していくことが重要です。
※本記事は、東京都で風俗営業許可を検討する方に向けた一般的な情報です。実際の管理者の選任や適用される規定については、営業形態や店舗の状況によって異なる場合があります。個別の案件については、管轄警察署や専門家への確認が必要です。

